Shoegazer,Skygazer
「なんでもかんでも二択で分けちゃえば、楽かもしれないけど難しいよね」


ひどく抽象的な表現だが、言わんとしていることはすぐに理解できた。

ミケはこう続ける。


「例えばさ。ミヤタ君にとってお母さんは好きと嫌いが混じってるじゃない。二択にできるけど、こうして混ざることもできるじゃない」


あのときの感情にようやく名前が付けられそうだった。

虚無よりももっとごちゃついていて、複雑ほど豊かじゃない。

混ざっていた、んだろう。

汚いけど綺麗で、好きだけど嫌いで、裏切っているけど騙したくなくて。



「それって、生きたいと死にたいも同じなんじゃないかな」



そう言われてはっとなった。

俺は無意識に、その二つの感情を対極に置いていた。


だけどもミケは、それを混ぜる事ができると言う。


「だったら生きたくなるまで死んでいればいいと思う」


「逆じゃないの」


「ううん、ミヤタ君にはこれでいいの」


俺は、もう死んでいるような顔をしているとさっきミケは言った。

つまり、生きたくなるまでそういう顔をしていたっていいと。



俺を、肯定して、認めてくれた。


死ぬ必要もないし、生きる必要もない。

普通の人であれば言われたら寂しいかもしれないその発言も、俺にとっては居場所を得たように感じられた。
 
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