Shoegazer,Skygazer
いつのまにか日は高く昇っていて、蝉の鳴き声がけたたましく響く。

それでも俺の頭の中はいつもとは比べ物にならないくらい冷静だった。


「でも、なんか寂しいよね。まずはなにか一つ好きになろうよ。たとえばあたしとか」


「まだ言うの、それ」


さすがに呆れた。

足でばたばたと地面を蹴りながらけらけらと笑うミケは確実にふざけている。

ただ、いつまでも重々しい話をしているより、彼女が相手ならこっちのほうが気持ちいいかもしれない。


こんな、下らない話を楽しいと感じたのはいつぶりだろう。

自分の中で煩雑に絡まった糸が少しずつ解けていくような感覚が胸を走った。


「ミヤタ君が嫌いで嫌いでしょうがない空を好きになるヒントもあげようか」


いたずらっぽく笑って、ミケは俺の顔を覗きこむ。

嫌いだと言った覚えはない。

ただ見ていると死にたくなるような気分がふつふつと俺を覆い隠すだけだ。


「それは遠慮しとく。別に好きにならなくたっていいと思うし」


「違うの、あたしが嫌なの」


と言って駄々をこねるように俺の腕を揺さぶった。

どうして俺のことまでミケが口を出すんだ。

さっきは嬉しかったけれど、さすがにここまで介入されたくはない。


ミケはぴょんとベンチから立ち上がると、俺の目の前に立つ。

俺は太陽の光を背にした彼女の顔を見上げ、その眩しさに目を細めた。


「教えてあげるよ。あたしの名前」
 
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