Shoegazer,Skygazer
ミケはずいと身を乗り出して俺の顔を覗き込むと、上目遣いに見上げてくる。

にやりと笑ったその表情から、次に放たれる言葉の予想がある程度絞り込めるうえに、あまりにわざとらしいその仕草に思わず溜息が漏れた。


「むふふ、このひと夏の思い出作っちゃう? ナゾの女子高生とアバンチュール……くぅ、燃えるよ?」


「……バッカみたい」


それと先ほど挙げた『適当』に加えてもう一つ、本気でバカ。

どうも本能に忠実に生きている印象を受けるのだ。

その証拠に、今のような『性』をちらつかせる言動がちらほら。

当然俺からしたらそういう対象に見られる相手でもないので流している。

もしかしたらこうしてあちこちで異性を誑かして遊んでいるのかもしれない。

といっても本人に確認をとったわけでもないので、失礼な想像の域を出るものではなかった。

確認をとるつもりもない。


いっそのことこいつくらい適当で単純なほうが、変に悩まずに済むのかもしれない。

といっても、母親の死という痛みを一度抱えたことは確かなことであり、適当というよりは単純に『強い』……のだろうか。

となると相対的に俺は『弱い』ことになるが、それに対して否定できる材料はなかった。


ミケは俺の言葉を聞き流したようで、まったく気にした様子がない。

体でリズムを取るように左右に揺れながら、足を伸ばしてぶらぶらさせていた。

つま先にサンダルをひっかけるようにして揺らし、微かに鼻歌すら歌っている。

伸ばした足は日陰からはみ出して、強い日差しに晒されて白く光っていた。

――初めて会った時は全身真っ白だった彼女の肌は、この数日でいくらか焼けている。
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