Shoegazer,Skygazer
ミケに見つかったとなれば、もはや本来の目的達成は不可能と断定していい。

……ここのところずっとだけど。

俺は開いていた教科書をいささか乱暴に鞄にしまいこんだ。

別にそこまで楽しんでいることでもないが、予定を邪魔されるのは気分のいいものではない。


「純粋に邪魔なんだよ。集中できないし」


「へぇ。あたしが来るの分かっててここ来るのに?」


再び、俺の顔を覗き込んでくる。

不敵な笑みが神経を逆撫でしてきて、実に気分が悪い。


「……先にここに入り浸ってたのは俺だ」


「いるって分かってる相手のところに来て会うのは奇遇とは言わない、んでしょ? じゃあミヤタ君はあたしと会うのも分かってたはずじゃん?」


それで論破したつもりか。

あとから来ておいて図々しいものだ。

俺からしたらここに来るのは日常の一部。

そこに割り込んできたのはミケ。


「それは屁理屈。クラスメイトに会いたいから学校に行くわけじゃないし。近くて都合がいいからここを選んでるだけ」


「でも、あたしが『ミヤタ君が来ることを知ってる』のはここだけだよ?」


どうしても『自分に会いたい』という方向に持って行きたいらしい。ふざけるな。

第一ここは本当に俺にとって都合がいいのだ。

家から近い、ベンチの方向的に外から見えにくい、ちょうどいい木陰もある、コンビニが近い、交番から遠い、人も来ないし人通りも少ない。

まさにうってつけの場所だったのに、ミケごときに侵されてたまるか。

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