Shoegazer,Skygazer
密着したところがじっとりと熱を持っていく。

夏の盛りに突入していると言って差し支えない気温の中、お互いの体温を近付ける行為はバカげているとしか言いようがない。

バカップルでもきっとクーラーの入った部屋でしかしないだろうし、ましてや俺たちはそういった色っぽい間柄でもない。


いくら人目がないとはいえ、こんなところでしがみつかれても反応に困る事くらい分からないんだろうか。

感性が普通じゃない奴に普通を求めても無駄、か。


さて。

待てと言われてそこからどうするんだ、これをどうしようかという解決法が浮かぶより前に、目前に迫る危険を感じ取った。

日差しが急激に弱まり、辺りの明るさがワントーン下がる。

ふと見上げてしまった空は少し濁った雲が青を覆い隠し、照りつけていた太陽もその向こう側にぼやけていた。

経験、直感、一般論、その他諸々を根拠にして、俺は予感に近い予測を即座に弾き出す。


「……降るよ、これ」


夏にゲリラ豪雨はつきもの。

そして今の空の様相は、それを予感させるに充分すぎた。

風が吹いて桶屋が儲かるよりよほど確実だ。

つまりミケがなんといおうと帰るしかない。

それも、今すぐに。

できるだけ急いで。


「え、嘘。まじ?」


先ほどまでのしおらしさをどこかに置いてきたような、頓狂な声だった。

ミケがそういう奴なのはこの一週間で把握したから今更呆れない。

呆れているのが常とも言う。


その言葉とともに、背中に押し付けられていた体が少し離れるのを感じた。

同じように空を見上げたのだろう。
< 39 / 43 >

この作品をシェア

pagetop