Shoegazer,Skygazer
「うわほんとだ。やな空気」


空、ではなく空気ときたもんだ。

本当に動物みたいな奴。

体が少し離れている隙に、腰に回された腕を掴んで剥がす。

気を抜いていたらしい拘束はあっさりと解かれた。

俺は振り返ることなく、納得の遅そうなミケに改めて別れを告げる。


「ぼやぼやしてたら降る。濡れる前にさっさと解散したほうが賢いと思うから待ちたくない。じゃあそういうわけで」


「それは『今』の話でしょー!? 都合いいなぁ、もう」


早足で歩きだした俺を追うようにしながら、ミケも公園の出口に向かって歩くのがわかった。

出口はひとつしかないからそこに文句は言わない。

妙なことを言うだけ余計だからでもある。


「拗ねちゃったなら謝るからさ、もう来ないなんて言わないでよぉ」


「……さっきもそんなこと言ってたけど、謝ってないよね? 俺もガキじゃないしいちいち腹立てたくないんだけどさ、気に障るもんはさわ――」


ぽつり。

ぽつ、ぽつ。


ゲリラ豪雨の到来を告げる雨音が落ちた。

猶予はない。

じきに大雨になる。


俺は何も言わずに走り出した。

生憎傘は持っていなかったし、持っていたとしてもミケが一緒にいる状態ではさすにしてもささないにしても色々と面倒臭い。


そうこうしている間にも、みるみるうちに雨音は加速していく。

俺は走りながら心の中で悪態をついた。


ミケを振り切りたかったが、諦めて近場で雨宿りするしかない。
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