恋病薬
私は青くなった顔をキッと先生に向けると…


「“イチゴのケース”落ちちゃいましたっ!!!!」

「え…「えぇぇええっ!!!!!!」」


またも先生の言葉を遮ったのは私ではなかった。


「姫ちゃんっそれ本当っ!?」

教室の端、千代ちゃんの席から声が聞こえる。

私がひとつ頷くと、千代ちゃんは先生を見て…

「先生っ!探しに行かせてあげて下さいっ!!」

すると先生は困った顔で私を見て一言「行ってきなさい」と言った。

私はすぐさま下に向かおうとすると、千代ちゃんが心配そうに語りかけてくる。


「一人で大丈夫?」

私はそんな千代ちゃんに…

「大丈夫だよ、行ってきます」

っと…笑って言って、下へ向かった。




今思うと千代ちゃんに付いてきてもらえば良かったと、強く後悔しているけれど……―――。











「確かこの辺りを曲がって……」

下に着いた私は、ムダに広い校庭を歩き回り、教室の窓の下となる所を探す。


「うぅ…やっぱりまだ道覚えてないや…;」


だって入学してまだ1週間なんだもん…

この高校ムダに広いし…、自分の教室を覚えるのに苦労したくらいだ。

因みに1年の教室は三階、だから一階の、ましてや庭の道なんて全然わからないのだ。




「あっ…この風景…」

それでも歩き回っているうちに、それらしい所に着いたらしい。


「ここ…いつも教室から見てるトコだよね…?」

誰に語る訳でもなく、そう言ってキョロキョロすれば、目に入ってきたのは、さっきまで居た教室。


その下を見れば二階の窓、次が一階。

その下に…



「あれ…?;」



ない…


「え、確かにこの辺りに落としたのにっ!?」


私は慌てて探すけど、全く見付からない。




「うぅ…ないよぉ、“イチゴのケース”…」



今更だが“イチゴのケース”とは、私が薬入れとして使っている物で、千代ちゃんからの誕生日プレゼント…なんだけど…


「何でないのぉ…」

私は涙目で辺りをくまなく探す。


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