愛して。【完】





何で今まで気づかなかったのか、不思議だ。


いや、気付いていたけど、どこかで気付いていないフリをしてたのかもしれない。




「蓮は、水川真梨だからやってみたいんでしょ…?だったら…ッ「ちげぇ!」




いつまでも話し続けるあたしに痺れを切らしたのか、蓮が声を張り上げる。


蓮の低い声に、あたしの肩はビクッと上がった。




「俺は――…水川真梨だからじゃねぇ。真梨だからだよ」


「意味、わかんない…」




蓮の銀の瞳と、視線が交わる。


銀の瞳は、ジッとあたしを捉えていて。


逃げられない――…




「真梨」




名前を呼ばれて、伸ばされた手に、ビクッと体が反応する。


身体が――…震える。


こんな状況で体が震えるのは――…“あの日”以来だ。








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