愛して。【完】
「なぁに?」
そうにこやかに問えば、男は表情を少し緩ませる。
「お前、水川真梨だよな?」
「そーだよぉ♪あ、でも今日はこの通り決まってるんだぁ。ごめんね?」
…この男は、何を考えているのだろうか。
あたしが男といる時は話し掛けない。
それは、無言の了承のはず。
それに、この男――…どう見ても、不良だ。
痛んだ金髪を肩まで伸ばして、たいしてカッコよくもない顔をさらしている。
…あたしの範囲外だ。
あたしじゃなくて、そこら辺に歩いてるお姉さんを誘えばいいのに。
「てめぇの事情なんて知らねぇよ。いいからこいや」