愛して。【完】
でも――…なんて、思ってる時間すらもったいない。
まずは目の前にいるこの不良をどうにかしなければ、どうにもならないのだから。
「ねぇ、ちょっと!離してよ!!」
暴れて必死に抵抗したって、男の力には敵わない。
でも、この男が向かっている方向はわかってる。
さっきあたし達が行こうとしてた…ホテル街だ。
この男は、あたしに相手してほしいだけなのか。
それとも、他に理由があるのか。
…わからない。
ただ、あたしに出来るのは。
抵抗するってことだけで。
だからと言ったって、あたしには引きずるようにあたしを引っ張る男の背中しか見えない。
「離してよッ」
そんなあたしの声が無残にその場に響いていて。
気付いた時にはもう…ホテル街に、着いていた。