愛して。【完】
【光side】
「離してよッ」
そう言いながら前に歩く男に引きずられているのは、俺の大嫌いな水川真梨。
ただ、その姿は――…本当に抵抗しているように見えて仕方がない。
誰でもいいって、それが水川真梨じゃねぇのかよ…
「光」
「何だよ、虎太郎」
少し声を低くしている虎太郎の視線も、今は水川真梨を捉えているだろう。
「あれ――…どうすんだよ」
そう言った虎太郎を見ると、その表情は困惑で染まっていた。
それは、多分俺も同じで。
何でそんな嫌がってんだとか、
何でそんな泣きそうな顔してんだとか、
そんなことに自分で気付いてないのかとか、
思ってることは、沢山ある。