愛して。【完】
後ろに引かれたことによって、進めなくなった男は立ち止まり。
男が立ち止まったことによって止まったあたしは、後ろにそっと振り返った。
でも、あたしはあたしを後ろから引っ張ってくれた人を見て、言葉を失った。
言葉が、出なかった。
だって、そうでしょう?
あんたは、あたしが嫌いなんでしょう?
あたしを恨んでるんでしょう?
あたしに何も求めてなんてないでしょう?
なのに、何で……
何で、ここにいて。
連れてかれそうなあたしの…
あんたの大っ嫌いな水川真梨の腕を、離さないの?
ねぇ――…
光。
「ひか…り……」
やっと出て来た言葉は、震えていて。
それが、連れてかれるのが怖かったからなのか、
光があたしを睨んでいる気がしたからなのか、
後ろからの虎太郎の優しい視線に安心したからなのか、
無性に泣き叫んでしまいたくなったからなのか…、
……わからない。