愛して。【完】
「光」
通話が終わったらしい虎太郎が、落ち着いた声色で光に声を掛ける。
光はあぁ、と一言声を掛けるとあたしを思いっきり引き寄せる。
油断していたらしい男の手は、意外にも簡単にあたしの腕が離れた。
それと同時に、あたしは光の腕の中に納まる。
「いったぁ…」
思わずそう言葉が漏れるけど、光は全く気にしてないらしく。
逆に、光は虎太郎へと視線を向けた。
すると虎太郎は、わかってる、と言う様に頷く。
二人の脳内はどこかで繋がってるのだろうか…
何で視線だけどか、一言声を掛けるだけで相手の言ってることがわかるわけ?
なんて言う疑問をあたしが口から出す暇すら与えられず。
光は、そのままあたしを引っ張ってその場からゆっくり離れ始めた。
あたしはと言うと、それに従うことしか出来なくて。
後ろから、ボコッと言う鈍い音がしたのは…
虎太郎があの男を殴ったからなのかなんなのか…
あたしは確かめることが出来なかった。