愛して。【完】
すっかり暗くなった空に、月が浮かぶ。
そんな月明かりに包まれたあたし達はと言うと、無言のまま歩き続けている。
でも、何も言いたくなくてそうしてる訳じゃなくて。
虎太郎と男を置いて来てよかったのだとか、
どこに向かって歩いているんだとか、
何で何も言わないんだとか、
逆に、言いたいことは沢山ある。
それでも口に出せないでいるのは…光が、そういう雰囲気にしようとしているからだと思う。
何もしゃべるな、という雰囲気を醸し出してるからだと思う。
でも、だからといって光はあたしの腕から手を離そうとはしないし。
あたし、どうすれば…
「――…あ」
突然、目に入って来たものに驚いたのか、他に理由があるのか…声が、漏れた。