愛して。【完】





それと同時に、足で地面を蹴り上げたのは、我ながら悪くない運動神経のお陰だと思う。



足で地面を蹴ったことによって、押された力に拍車をかけ、そのままわざと倒れこむ――と言うより、上半身を後ろにそらした。


スローモーションのように目の前の光景がぐるっと回って、視界が逆さに変わる。


階段を登ってくる人の驚いたような顔が逆さに見えて、変な感覚に陥る。


そこから目を逸らして逆立ちしたように階段の途中で手をついた。


ほのまま手に力を込めて地面を押して、景色が元に戻る――いわゆるバク転…もどきをしたわけだが――




…ガクッ


「――っ!?」




踊り場まであと一歩、という階段で着地してしまった足は、見事段差で捻ってしまったらしい。


ジリジリと痛む足を右手でそっと支えるけど、痛みは増すばかりで立ち上がることも出来ない。




――ありえない。


手はしっかり付けたのに…


今日のあたしは、とことん運が悪いらしい。


足と同時に痛む頭に、はぁと溜息を零した。






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