愛して。【完】
【光side】
アイツの栗色の髪が揺れる。
今日は栗色なのかと、呑気にそんなことを考えていて。
階段でバク転をした時には、アイツの全てに目を奪われた。
俺は、バカだろうか。
目がおかしいんだろうか。
なぜか…アイツの背中に羽が生えてるみたいに見えた。
そのくらい、バク転したアイツは軽やかで、儚くて、――綺麗だった。
「おい、大丈夫か?!」
ふるふると頭を振ると、思考を切り替える。
虎太郎に蓮さん達を呼びに行かせて、踊り場にしゃがみ込んだままの水川真梨に咄嗟に駆け寄る。
「光…?」
足を捻ったのか、右足を押さえたまま弱々しい声を出して顔を上げた。
痛みからか、少し眉間に皺を寄せたまま、俺を見上げてくる。
すると、自然と上目遣いになるわけで。
わざとなのか、何なのか。
ただ、顔だけは綺麗な水川真梨の上目遣いは、誰にとっても破壊的だ。
俺は動揺を悟られないように水川真梨の瞳から足へと視線を逸らした。