愛して。【完】
蓮に持ち上げられたまま外に出れば、正門の前についさっき乗っていた無駄に高そうな黒ベンツ。
そのままの体制で車の中に入れば、いつもの運転席にいる和也さんに「また会ったね」と嫌みとも取れる言葉をいただいた。
目の前には、蓮の程よく筋肉のついた胸板。
トクントクンと規則性のある音が耳に届く。
何か、安心する…
「蓮」
「ん?」
「どこ行くの?」
「病院」
病院…あぁ、足怪我したの診てもらうのか…
別に、放っておいても平気なのに。
「行かなくていいよ」
「よくねぇ」
「でも「いいから黙ってろ」
遮られると同時に、上げようとした頭を押さえられる。
それに抗うこともせずに力を抜けば、クシャリと頭を撫でられた。
増した安心感に、閉じて行く瞼。
最後に見えたのは、フッと笑ってあたしを見ている蓮だった。