愛して。【完】
「は…?」
タカの少し低くなった気がする声と共に、その場が凍りつく。
「いらないって…お前、わかってんのか?!朝からなんも食ってねぇんだぞ!!?」
タカの声だけが部屋に響く。
まるで、あの日を見てるみたいだった。
“食べたくない”と言った俺に怒った、あのタカを見てるみたいだった。
「朝から何も食べてなかったんだ…」
何とも思ってないように、ふとそう言った真梨に誰も口を開かない。
「もういい?」
戻っていい?とでも言うように軽く言った真梨に、俺の鼓動は早くなる。
好きとか、そんなんじゃなくて。
もっと別の感情が、俺の中を支配する。
今にも部屋を出て行きそうな真梨を止めたのは、蓮だった。
「待て、真梨」
「何?」
「ちょっとでもいいから食えよ」
蓮がそう言うと、颯が真梨の後ろに歩いていく。
「だから食欲ないって…ぅわっ」
驚いたような声と共に真梨の腕が颯に引かれて、怪我でバランスの取りにくいだろう体が揺れる。
「はいはい、とりあえず座ろうか」
颯がそう言えば、真梨は俺が床に座っている所の横にあった三人掛けソファーに小さな音をたてて沈んだ。
それを横目で見てから、料理へ視線を移す。
…お腹空いた。
「ちょっ「なぁ、もう食っていい?!これ以上待てないんだけど!!」
真梨の声を遮ってそう言えば、
「はいはい、さっさと食べな」
返ってきたタカの言葉に我先にと「いただきます」と言ってから、料理へと手を伸ばした。