愛して。【完】
そんな俺に何を思ったのか、真梨は呆然と俺を見る。
「真梨?」
真梨を問い掛けるタカの声にハッとしたように、周りを見渡し始める真梨。
視線を蓮に定めると、戸惑い気味にそっと、箸へと手を伸ばした。
「ありが、と…」
小さな声で呟くと共にお箸を手にした真梨を見て、蓮は口角を吊り上げる。
そのまま真梨は味噌汁を手に取ると、そっと口へ運んだ。
タカの味噌汁は、絶品だ。
真梨もきっと、気に入る。
「美味しい…」
俺が思った通りそう言った真梨の頬は、自然と緩む。
それを見て、タカは嬉しそうに歯を見せて笑った。
「そりゃよかった。作ったかいがあったな」
それを聞いて、真梨が目を丸くする。
「コレ、タカが作ったの?」
「あぁ」
「本当に?」
「本当だ」
「うそぉ」
「うそじゃねぇし」
信じられない、と言う様に目を白黒させる真梨。
一応俺も大河も、颯も手伝った、なんて言ったらもっと吃驚するんだろうな。
面倒臭いから、言わないけれど。
真梨が、もう一口、味噌汁を口に運ぶ。
そして、俺は目を疑った。
真梨の瞳が、潤んでいたから。
「真梨?」
「おい、しい…」
真梨の言葉と共に、溜まりきった涙が頬を伝っていくのから目が離せなかった。