愛して。【完】
振り向けば、そこにいたのは虎太郎。
「なんだ…虎太郎か」
「え、水川真梨?!」
吃驚した様な声を出して、目を見開いてあたしを見る。
そんなに珍しいのだろうか。
いや、きっと虎太郎が驚いているのは、髪だけじゃない。
瞳が青いこともだろう。
「そんなに驚く?」
「いや、だって…瞳……」
虎太郎の遠慮がちな声に、小さく笑いが漏れる。
「気味悪いでしょ」
「いや…もしかして、ハーフ?」
「さあ。母親は日本人だけどね」
父親なんて、知らない。
虎太郎もそれに感づいたのだろう。
それ以上、聞いてくることは無い。
「なあ、ちょっと話さない?」
「え?」
「決まりな」
あたしの答えも聞かずにそう言った虎太郎は、あたしの腕を掴んで歩いていく。
だけどそれは、あたしの怪我を労わってなのか、妙にゆっくりだ。
そんなあたしと虎太郎の存在に気付き始めたらしい周りの奴等は、何が起きたのかとでも言うようにこっちを見詰めていた。