愛して。【完】
光はそれから荒れて、よく喧嘩するようになった。
幼なじみは、彼氏を取られたという同情の視線に耐えきれず県外に引っ越していった。
変わっていく関係、変わっていく周り。
だけど俺だけは、そこから動けなかった。
動くことが出来なかった。
幼なじみの彼氏…元彼から水川真梨のことを聞いてから今日の今まで、俺は何も変わっていない。
忘れたくなんて、ないから。
あいつから聞いた水川真梨を、忘れたくは無かったから。
「俺…水川真梨が好きだ」
そう言ったあいつを、忘れたくないから。
「おかしいだろ…?ただの気まぐれのつもりだったんだ。あっちもただの遊びだって、わかってんだ」
でも…、そう言って唇を噛み締める、あいつ。
呆然と、思った。
これが水川真梨か、と。
男をいつの間にかハマらせる――これが、水川真梨。
一つ、訂正をしておこうと思う。
水川真梨の周りの男が、全て遊びと割り切っていたわけじゃない。
水川真梨は割り切っていると思っているだろうけど、そうじゃない。
だって、この時俺は確信したんだ。
水川真梨に渦巻く噂の一つは、本当だと。
“水川真梨を抱いた約半数の男は、本当に水川真梨に惚れる”
それだけは、本当なのだと。