愛して。【完】
「“ここ”?さあ、ね。虎太郎はどう思う?」
「え…」
自分に振られるとは思わず、間抜けな声が出る。
「虎太郎は、あたしがここにいる理由…何だと思う?やっぱり、自業自得だとでも思う?」
その台詞は、どの“ここ”を言っているのかよくわからない。
だけど…
「どうだろうね」
そんなこと、俺には分からない。
「俺、水川真梨のことどうこう言うほど知らないし」
そう、当たり前のことを言った。
でも、水川真梨は驚いたように目を見開いて。
その後、目を細めて笑った。
「虎太郎、子供みたいだってよく言われない?」
「なんだそれ。言われたことないけど」
初めて見た真梨の本当の笑みに動揺を隠すように、突っぱねたようにそう言う。
まあ、実際子供っぽいとかは言われたことないしな。
「でも、そんなこと言ってくれたの虎太郎が初めてだよ」
少し切なそうに、視線を下に向ける。
「みんな、大人になればなるほど人を信じなくなる。誰も、否定しても信じてくれない。おかしな噂は信じるのにね?」