愛して。【完】
水川真梨が、何を言いたいのかわからないわけじゃない。
ただ、その事実になんだか納得してしまう自分がいた。
その台詞に含まれた、大きな事実。
水川真梨も、昔は遊び人ではなかったのだろう、その事実に。
「あたしだって…好きでこうなったわけじゃないのになぁ」
自嘲気味に笑って、水川真梨は言葉を零していく。
「誰が好き好んで援交なんかするかっつーの」
「……」
「何でこの世の中は嘘ばっかなんだろうね」
「…確かに、この世の中は嘘ばっかだな」
ポロリと本音が出た俺に、真梨がクスッと笑う。
「だとしたら、あたしもこの世の中の嘘の一つなのかな」
「水川真梨…?」
どこか遠くを見つめて呟く水川真梨は、今にもどこかに消えて行きそうだ。
でも、視線を俺に映すと、ゆるゆると頬を緩めた。
「その“水川真梨”ってのやめない?」
「え?」
「長いし、面倒臭いじゃん。真梨でいいよ、真梨で」