愛して。【完】
少し笑うと同時に、足が軽く地面に着く。
意識を足に向けて怪我した足を庇うように立とうとしたものの、それは近付いてきた蓮に遮られた。
「真梨」
「な、に……わっ」
目の前に立った蓮がブランコの鎖を軽く揺すって、それを握る手に力が入る。
「ちょ、何する…っ」
思ったよりも蓮の整った顔が目の前にあって、身動ぎする。
「キスしてぇ」
「え…」
何言ってるの、そう言うより前に蓮の大きな手に頭の後ろを支えられたかと思うと、互いの唇が重なっていた。
思わず目を見開く。
挟んで、啄んで、舐めて、小さく音を鳴らして。
前に蓮としたような荒々しいキスじゃなくて、優しくて、勘違いしそうになるような甘い甘いキス。
ただただ、それに酔いしれて呆然とするしかなくて。
心臓だけが、狂ったようにどくどくと鳴る。
だけど蓮の後ろに見えた光景に、あたしは一層目を見開いた。
だって、そこには蓮に殴りかかろうとしている男がいたから。
いや、もはや殴り掛かりに来てる男がいるから。