愛して。【完】
相変わらず蓮は目を瞑ってあたしに甘いキスを落としていて。
これに気付いているのかさえ、わからない。
――でも。
男がすぐ目の前に来て、今にも蓮を殴ろうとしたその時。
あたしの頭を支えているのとは逆の腕の肘を後ろに俊敏に突き出した。
それは見事に男の顔面にヒットし、男は軽く吹っ飛ぶ。
またも一層目を見開くと、目の前の蓮は少し目を開けて唇を離した。
「蓮、」
何すんのよ、という言葉を飲み込んで気付いてたの、と言おうとしたけど言えなかった。
「目ぇ閉じろよ」
そう言って、また蓮が唇を塞いだから。
でも、目を閉じることはできない。
だってさっきの男のほかにも仲間がいたのか、また他の男が近付いて来たから。
「ちょ、れ…んっ」
少し抵抗するように口を開けば、その隙間から蓮の舌が入り込んでくる。
一気に強張るあたしの舌を蓮のそれで無理矢理絡め取られる。
そしてあたしにキスをしたまま、殴りかかって来た男を蓮は長い足で蹴り倒す。
蓮の足が元の位置に戻るとほぼ同時に、蓮の唇は離れて行った。
「あーもう、うぜぇなぁ。お楽しみ中ぐらい黙って見てろ」