愛して。【完】
口から血を吐く男、
腹を押さえて蹲っている男、
腰が抜けたのか地面に手をついて震え上げっている男、
そして、蓮に胸ぐらを掴まれている男。
「真梨…」
強張る体に神経を集めて、ブランコから立ち上がる。
「蓮、その手離して…」
もしかしたら、声は震えていたかもしれない。
蓮は男の胸ぐらを掴んでいた手を離す。
男は地面に音をたてて落ちた。
「わりぃ」
心底バツの悪そうに眉を八の字に垂らして言う。
「何が?」
「…変なモン見せて」
「別に、大丈夫」
そう笑ったつもりだけど、笑えていたかどうかはわからない。
正直、見たくは無かったし、少し怖い。
ただ、蓮は眉間に皺を寄せただけだった。
「ねぇ」
「なんだよ」
「この男達…どうするの」
視線を男達に向ける。
唯一意識がしっかりしているだろう腰の抜けている男は、恐ろしいものを見る様な目でこっちを見ている。
「…さあ、どうすっかな」
「さあって、決めてないの?」
「ああ…とりあえず颯にでも連絡するから」
そう言って、蓮は少しブランコから離れる。
ここにいろ、ということだろう。