愛して。【完】
「蓮?!どうした!!」
タカが蓮の声に驚いてただでさえ大きい声を上げる。
そして俺達は、そこから聞こえたきいたこともない声に愕然とした。
「おっと、動くなよ。この女が大切ならな」
この女――それは、きっと真梨。
そしてこれは、真梨が拉致られそうになっているというれっきとした事実を俺達に叩き付けた。
咄嗟にスピーカーにしたのだろう、ざわざわと数人の男の声がする。
「おい、さっさと乗せろ」
「ああ」
「志摩、動くんじゃねぇぞ。大人しくしてりゃあ、今んとこは何もしねぇからよ」
車だろう、大きなエンジン音が聞こえる。
「蓮、今は無理だ。一回引け」
颯の冷静な声だけが、その場に響いた気がした。
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―――――…
いつもより冷たいように感じるこの空間だけど、俺の頭は冷めるどころか熱くなっていく。
蓮に対して怒ってるわけでも、真梨に対して怒ってるわけでもない。
ただ、何もできない自分に腹が立つ。
早く真梨を拉致した奴等を捻り潰したい気持ちでいっぱいだった。