愛して。【完】
「蓮、どうする気」
颯のいつもより低い声が響く。
「…ぶっ潰す」
低く唸るような蓮の声が聞こえて、俺は思わず部屋を出た。
どこの奴らが拉致ったかなんて、わかりきっている。
蓮が車のナンバーを見たって言ってたから、間違いない。
“邪鬼”だ。
一度、真梨が繁華街に男と行った時に連れ去ろうとしたところ。
あの時すでに、邪鬼は俺達に喧嘩を売っていた。
もちろん買うつもりだったけれど、こんなに早く事が起こるなんて想像もしていなかった。
まあ、いつことが起ころうが負ける気なんてサラサラねぇけどな。
「光ー!虎太郎!!」
倉庫に十分響く大声で、二人の名を呼ぶ。
「「はい!!」」
返事をした二人に、階段の上からフッと笑った。
「できるだけメンバーを集めろ!!今すぐにだ!」
「はい!!」
光が大きく返事をして、虎太郎がケータイを取り出す。
きっと連絡を入れてるんだろう。
真梨が拉致られたことは早々に二人には知らせてあった。
その所為か、いつもより人が多い。
きっと少なからず人がいるだろうと寝室でゴロゴロしてる奴等を叩き起こしたんだろう。
「できるだけ早く準備しろ!!すぐ出るからな!!」
「はい!!」
「外にいる奴等は現地集合でいい!!待ってる時間なんてねぇからな!?」
「了解です!!」
虎太郎の大きな返事を聞いて、とりあえず後ろを振り向く。
すると、タイミングがいいのかなんなのか、幹部室の扉が開いた。
「準備できたか」
我らが皇帝の低音が、そこまで大きいわけではないのに嫌に倉庫に響いた。
【隼side end】