愛して。【完】





「何で…っ?!」




体を恐怖が覆って、震えるのがわかる。


だってここはきっと獅龍じゃない。


獅龍だったら蓮の総長室に寝かせられるだろうし、髪染めの水やお湯でしか取れないスプレーをわざわざ取ったりしないだろう。


ただし、あたしの体を包んでいる服は変わらず制服であることに少しホッとした。








「気分はどう?お姫様」




後ろから声がかかって、大げさなくらいに体が揺れる。


聞いた事の無い…少し高めだけど男だとわかる声。


振り返れば、物腰の柔らかそうな男が立っていた。


だけど、それは表情や雰囲気だけで。


少し垂れ目な目が強くあたしを突き刺すように見ている。




「そんな顔しないでよ。可愛い顔が台無しだよ?」




あたしが今、どんな顔をしているというのだろうか。




強張った顔?


怒ってる顔?


怯えた顔?


泣きそうな顔?




いや、きっと今のあたしには無表情と言う言葉が一番似合う。





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