愛して。【完】





「あんた、誰」


「そう言えば、自己紹介がまだだったね」




機械的に、でも綺麗に笑う男に背中に悪寒が走るのがわかる。




「俺は星宮千早【ほしみやちはや】。邪鬼の総長だよ」


「邪鬼…?」




聞いたことのあるような名前に、眉間に皺が寄る。




「ふふ、忘れたの?ついこの間、繁華街で真梨ちゃんを連れてこうとした男の所属してるところだよ」




そう言えばそう言うこともあったな、なんて思うよりも前に、男…星宮千早に名前を呼ばれたことで鳥肌が立った。




「ちょっと」


「ん?どうかした?」


「勝手に人の名前呼ばないで」




何か、気持ちが悪い。


こいつが何を考えてるかもわからないし、何をしたいのかもわからないし…とにかく、気持ちが悪い。




「え~、やだよ」


「キモい」


「そんなこと言っても体震えちゃってるから意味ないよね」




最初から今まで震えの止まらない体を指摘されて、体がびくりと揺れる。




「ただの生意気なメス猫かと思ってたけど、可愛い所もあるもんだね」


「なっ」




“メス猫”


その言葉に反論しようとして、あたしの思考は停止した。


後ろにいたはずの星宮千早の顔が、あたしの顔のすぐ前にいたから。





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