愛して。【完】




「蓮は、傷付かないと思うけど」


「そんなわけないよ。だって志摩はまだ真梨ちゃんに手出して無いんでしょ?噂によると志摩は真梨ちゃんのこと大好きみたいだし…」




星宮千早の言ってることがわからなくて、はあ?と顔を歪める。




「星宮千早…何言ってんの?そんなわけないでしょ」


「あ、俺の名前ちゃんと覚えてくれたんだ?でもフルネームって言うのは感心しないなぁ」




嫌らしく笑いながら、星宮千早はあたしのカーディガンのボタンを外していく。




「ちょっと!!」


「ほら、俺の名前呼んで?」




ぬるい吐息が、首筋にかかって体が反応する。


何でこんな展開になっているのか、いまいち掴めない。


結局あたしは拉致られたんだろうけど、あたしを拉致って意味があるとも思えないし。


きっとあいつらは、あたしを助けに来るなんて気さらさらないと思う。


なんてったってあたしはあの水川真梨だし、“姫”だと認められたわけでもない。


助けに来たとしても、それはほんの少人数だろうし勝ち目もあまり見込めないと思う。




カーディガンのボタンを全て外されたところで流石にヤバいと思って抵抗したけれど、あたしの両手は簡単に捕まえられた。




「そんなんで逃がすわけ無いじゃん」


「じゃあやめてよっ」


「無理。あ、わかってると思うけどここ邪鬼の溜まり場の一部だから。ここ抜けられたとしても、すぐ掴まるよ?」





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