愛して。【完】
輝き
【光side】
「光ー!虎太郎!!」
隼さんにそう呼ばれた時、確かに大きな声で返事をした。
次の言葉にも、大きな声で返事をした。
だけど、俺は本当なんだと他人事のように思うだけで。
何だか自分が何をしているのかわからなかった。
無気力とでもいうのだろうか。
ただ、水川真梨が拉致られたんだと、確かな事実を受け止められていなかった。
その間にも隼さんと虎太郎が何かを言っていたが、よく聞き取れなかった。
でも、自然に聞こえて来た誰よりも低い声で、現実を見せつけられた気がした。
「準備できたか」
蓮さんの声は、いつもより何倍も低くて、威圧感を放つ。
それには怒りと情けなさと苦しさと悔しさと、全てが混じっている気がして俺は目が覚めた。
ああ、水川真梨はここにいないんだ、と。
蓮さんの隣に、いないんだ、と。
他の下の奴等も、同じような感じだったと思う。
虎太郎だけが、少し違っていた。
蓮さん達と同じような表情をして、苦虫を噛み潰したように顔が歪んでいる。
ただ、行かなきゃ、と思った。
助けに行かなきゃ、なんて自分らしくもなく思った。