愛して。【完】
この数日見てきた水川真梨は、確かに本当の水川真梨だったと思う。
派手な顔で、
妖艶な巧み笑いを浮かべて、
でも無邪気に笑って、
苦痛に顔を歪めて、
怖さに体を強張らせて、
必死に抵抗して、
下の奴等を誘ったなんてことは誰にも聞かない。
それだけでも、俺が持っている水川真梨の印象は確かに色を変えた。
最初は憎くて仕方が無かった。
確かに俺の大好きだった女を泣かして傷付けて、ここにいることすらできなくさせた糞女。
俺の中での水川真梨はそれ以下にはなってもそれ以上になることなんて無かった筈だった。
――でも。
水川真梨を見れば見るほど、それはどんどん塗り替えられていく。
強い眼差しも、
意志の強い声も、
強がりも、
無邪気な笑みも、
俺が想像したものとは全く違った。
俺が数日見て来た真梨は、飾り気のないただの少女だった。
ある時は自分に正直で何でも言い返してくるくせに、
またある時は強がってるの丸わかりなのにそれを突き通そうとして、
そのまたある時は妖艶に笑ったと思ったら子供みたいに無邪気に笑って、
大人なのに子供で、不安定な少女だった。