愛して。【完】
蓮さんの声に、誰もが頷いたのは言うまでもない。
いや、もしかしたら何で、と思う奴もいたかもしれない。
だけど、蓮さんのこんな声をきいてしまえが何もかも水の泡だ。
だって声だけでわかる。
蓮さんはこんなにも水川真梨を必要としている。
それだけで俺達には水川真梨を助ける十分な理由になる。
俺だって、わかってるんだ。
こんなことを思う時点で、もう進んでしまっている。
水川真梨が姫だと認めてしまっている。
この人以外に姫になれると思わない、なんて。
俺は何を思ってしまっているのだろうか。
「行くぞ」
そう言って蓮さんは自身の黒いバイクに飛び乗る。
他の幹部の方々も自身のバイクに跨った。
…自分のバイクを使うなんて珍しい。
だけど、そのくらい心配なんだと思った。
車なんかじゃなくて、自分の手で行きたいのだと思った。
でも、車もないと水川真梨に何かあった時大変だ。
「虎太郎、車」
「はいはい、わかってるよ」
笑う虎太郎に、俺も薄く笑う。
しばらくして現れたどこにでもあるワゴン車は、確かに俺達がよく使っている車で、運転席には和也さんが座っていた。