愛して。【完】





車に乗り込むと、動き出す。


隣には虎太郎、運転席に和也さん。


いつもとはちょっと違うその光景は、俺の心を妙に震わせた。




妙な緊張感は俺の鼓動を早くする。


抑えるように溜息を吐けば、思ったより早く邪鬼の溜まり場になっている廃工場についていた。




「早くないですか?」


「ん~…人が思ったよりいなかったからなぁ。あれじゃん、邪鬼も全員集めてるってことじゃない?」




邪鬼が全員…


だからいつもいる邪鬼の奴らがいない所為で混雑せず早く着いたってことか。




やる気十分、って?


はっ…んなもん、俺等がぶっ潰してやるよ。




「そうですか」


「まあ、そう来なくっちゃ困るよなぁ~…総長様方はやる気満々だし」




隣でクククッと笑う和也さんを横目で見る。


蓮さんに対してこんな風に言えるなんていったい何者なのだろうか。


いつも思っていることだけど、和也さんはミステリアスだし自分のことを話そうとはしない。


歳すら知らねぇし。


車を運転してるんだから、18歳は超えてるんだろうけどさ。




「楽しみだよな」




そう言う和也さんの心境が、心底読めなかった。




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