愛して。【完】
水川真梨の傍にいると思っていた星宮が、いない。
…どこ行ったんだよ。
ふと周りを見ると、星宮は水川真梨から少し離れた所で楽しそうに見物している。
勝つ気がないのか…?
確かに星宮には何とも言えない威圧感があるけれど、戦う気があるようには思えない。
さっきだって、ただ俺達を挑発するような行動や言動をしただけ。
俺達に勝つための利用材料になるはずの水川真梨はほったらかしだし、正直勝つ気があるとは思えない。
そんなことを考えている間にも迫ってくる相手を回し蹴りで吹っ飛ばした。
蓮さんはだんだん水川真梨との距離を少なくしていく。
何かあったためにと、俺は蓮さんの近くによる。
蓮さんが水川真梨の前にしゃがみ込むのを横目に見て、俺はそれでさえ狙った様に飛び込んでいる雑魚共を殴り飛ばしていく。
蓮さんが俺の方を見たから、頷いた。
ここは大丈夫ですから、安心してください、という思いを込めて。
蓮さんはそれが分かったのか、水川真梨に自分が着ていた制服のブレザーをそっとかける。
そして、聞いたこともないような優しい声色で水川真梨に話し掛けた。
「真梨」
「……れ、ん…」
やっと紡ぎ出したような水川真梨の小さな小さな声は、やはり震えている。
「ごめんな、遅くなって」
そう言った蓮さんの声も少し震えていて。
蓮さんは水川真梨をギュッと抱き締めた。