愛して。【完】





「真梨、とりあえず立てるか?」




感動の再開も程々にして、スッと蓮さんが水川真梨に手を伸ばす。


水川真梨はその手を取るけれど、足に力が入らないのか首を横に振る。




「そうか…」




本当は蓮さんが自分でここから出してやりたいのだろうけれど、蓮さんは総長だ。


抗争中にその場から離れることはできない。


となれば…




「光」




すぐ傍にいる、俺に声がかかるだろう。




その声が聞こえてすぐに、はい、と返事をする。




「真梨のこと、頼んでもいいか」


「もちろんです」




もちろん…その言葉に嘘はない。


憧れであり尊敬の対象である我等が総長の頼みを聞かない理由なんてない。


俺は蓮さんと持ち場を交換するように、蓮さんが向かってくる相手を抑え込むように動いたのを見て水川真梨に近付いた。




近付いて見た水川真梨は、なぜ蓮さんが一緒に出られないのかわかっているのだろう。


勘が鋭いのかなんなのか、こう言う所は本当他の奴より長けているんだと思う。


だって、確かに水川真梨は俺の名を呼んだから。


光、と消え入りそうな小さな声で、俺の名を呼んだから。





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