愛して。【完】
過去は捨てられない。
でも、置いておくことはできる。
頭の片隅に仕舞い込んで、それでも思い出してしまった時は自分なりの方法でまた仕舞い込めばいい。
泣きたかったら泣けばいい。
怒りたかったら怒ればいい。
逃げたかったら逃げればいい。
ただ、その方法が一人一人違うだけで。
みんなが過去を持っていて、みんながそれを心の奥底に仕舞い込んでいるだけだから。
それが感情を捨てたい理由にはならないと俺は思う。
「感情を、想いを捨てる必要なんてどこにもない。お前はお前らしくしてればいいだろっ?!」
「あたしらしく…?」
「ああ。あ、でも蓮さん以外の男と関係なんて持ったら俺がブッ飛ばしてやる」
そういう意味の、遊び人ということがお前らしさじゃねぇぞ、と言う様に付け足すと、真梨はさっきとは裏腹に少し笑みを浮かべた。
「そんなことするわけないでしょ。自分でも馬鹿らしいくらい、蓮を好きになってるみたいだから…」
ちょっと落ち着いたらしい真梨が妙に素直で調子が狂う。
「あっそ」
「うん」
本当に素直に頷いた真梨の目と視線が絡まる。
すると真梨は意を決したように真剣に口を開いた。
「あたしね、」