愛して。【完】





ごくりと、息を呑んだ。




「蓮と初めて一緒に寝た日……“殺して”って言ったの」




そう言った真梨が、あまりにも儚げで今にも消えてしまいそうだったから。




「この顔さえなければ、あんな思いしなくて済んだかもしれない。普通の容姿だったら、こんな風に遊び人になることもなかったかもしれない。

遊び人になることを選んだのはあたし。
だけど、そうなるように仕向けたのはこの顔。

この顔が、憎くて憎くて仕方ない」




蓮さんと初めて寝た日。


それは、蓮さんと初めてセックスした日、ということだろうか。


それとも獅龍に初めて来た日の夜、ということだろうか。


どちらともわからないけれど、とにかく真梨は自分の顔が嫌で死にたかったらしい。




「でもね、蓮は……変えてやるって言ってくれた。あたしを、あたしの考えを変えてくれるって言ってくれた」




蓮さんらしい、とは思わない。


蓮さんは正直女にも男にも容赦がないし、相手が真梨だからそういう風に言ったんだろう。




「それで、真梨はなんか変わったか?」




そう問えば、真梨は少し困ったような顔をして首を振った。




「…変わってない、と言えば変わってない。この顔が憎いのは変わらないし、今でも女も男もこんな自分も大嫌い。

だけどね、」




少し柔らかく笑った真梨は、初めて会った頃の真梨じゃない。




「蓮や…タカ、颯、隼、大河……それから光に虎太郎、獅龍のみんな。
まだまだ知らないこともいっぱいあるし、話した事の無い人の方が多い。

それでも、みんなといることが嫌じゃない。むしろ一緒にいたい、なんて自分らしくないことだけど思ってる。

バカみたいだけど、みんなの仲間になりたい。獅龍の仲間になりたい……

蓮はもちろん、みんなみんな…大好き」




俺が認めた、俺が姫だと認めた“水川真梨”という女だった。






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