愛して。【完】
「はい」
「光?」
出たのは、やっぱり当たり前だけど虎太郎。
焦った様子もないその声は、大した用事じゃないことを示している。
「何かあったか?」
「ああ……今蓮さんと星宮が殺りあってるとこ」
「そう」
車の窓には、スモークガラスでハッキリとは見えないけれど気になるのかこっちを見ている真梨が見える。
「後片付けもしなきゃなんないし…とりあえずこっち来れるか?」
「ああ、真梨もだいぶ落ち着いたしな」
「ふうん、そう」
ちょっと巧み笑いをするように言われた言葉の真意がわかって、うぜぇ、と漏らす。
「だって、光が真梨って…」
楽しそうにクスクス笑う虎太郎に、黙れと吹き込む。
やっぱりこいつは俺が真梨のことを下の名前で呼んだことが面白いらしい。
「まあ、成長したんじゃない?」
上から目線でモノを言う虎太郎。
うるせぇ、と言えばまた笑い声を漏らした。