愛して。【完】
顔が胸に押さえつけられて、硬直する。
ツンとする蓮の香りに包まれて、心臓が騒ぎ出す。
蓮はあたしの顎を片手で掴むと、自分の顔の方へと向けさせて。
あたしの唇に、噛み付いた。
容赦のない口付けは、あたしの思考を溶かしていく。
何も考えられなくなるくらい翻弄されて、あたしは反射的に蓮の来ていたスエットを握った。
「ふ、……んん」
二人きりの部屋に、あたしの甘い声だけが響く。
それが無性に恥ずかしい。
「れ…んぁ……っ」
名前を呼ぶことすら許されなくて、スエットを握ったままその体を押す。
それに抗うことはせずに離れた蓮の顔が今までのいつよりも色っぽくて、思わず顔を逸らした。
「真梨」
「ん…」
呼ばれたことに嬉しくなって小さく返事を返すあたしは、もうとっくに蓮の毒牙にかかってしまってる。
「先に起きてっからな」
「ん」
「お前もすぐ来いよ」
「ん…」
不貞腐れた様に顔の半分を枕に埋めたままのあたしの頭に軽く唇を落として。
思わず赤くなったあたしを見ることなく、蓮は扉の向こうに消えて行った。
「バカぁ……」
そう呟いたあたしの頬はしばらく元に戻ることが無く、あたしはなかなか部屋から出られなかった。