愛して。【完】
「任命式…?」
「正式に真梨を姫として迎えるための儀式だよ。獅龍の伝統なの」
正式に、あたしを姫として迎える……?
確かに光はもうみんなあたしを姫だと認めてる、って言ってくれたけれど。
“姫”っていうのは総長に次ぐ立場で。
それを正式に認めるってことは、あたしは獅龍で蓮の次に尊敬され、称えられる存在になるってこと。
それをわかってて、あたしを正式に“姫”だと認めるって言うの…?
「濱本光!!」
「はい!」
司会だろうタカの呼び声に、光はそう返事をして一歩前に出る。
一番前の列に立っていた光がそうすることによって、たった一人、前に飛び出す形になった。
「水川真梨!!」
光の声が倉庫に響く。
いきなり呼ばれた自分の名前に反応することが出来なくて、隣の蓮から返事、と言われてやっと口を開いた。
「は、はい」
それでも吃っているあたしの声は小さくて、倉庫全体に届いたかはわからない。
でも、光まで届いているのは確か。
だって光は、それを聞いて微かに笑ったから。
「言っただろ?もうとっくにお前は俺等の仲間だって」
いきなり始まった言葉に、少し狼狽える。
だけど、すぐに分かった。
昨日の、昨日光が言っていたことだって。
それがわかって、胸の奥が熱くなる。
もうあんな思いをしなくて済むのかと。
一緒にいてもいいのだと。
「お前はもう一人じゃねぇ。一人になんてさせねぇ、俺等がお前を守ってやる」
目の前が、霞んでいく。
「だから」
だから。
嬉しいから、どうしようもなく幸せだと思ってしまうから、あたしは泣きたくなる。
「俺等の仲間になれよ、真梨」