愛して。【完】
「愛してる」
紡がれた言葉に、声が出ない。
「軽い気持ちで言ってるわけじゃねぇ。わかるか?」
「う、ん…」
「本気で言ってんだ」
目の前が涙で霞んで、よく見えない。
「本気で、真梨を愛してる」
温かいものが、頬を伝った。
「蓮…蓮……っ」
「ん」
「ありがとう…っ」
あたしには“愛”ってものがよくわからない。
だから愛するって言うのがどういうものなのかわからないし、どうすればいいのかわからない。
だけど、これだけはわかる。
蓮にそう言ってもらえるってことが、あたしは嬉しいんだと。
幸せなんだと。
「蓮…」
「真梨」
顔が、近付く。
蓮の綺麗な銀の瞳が見えて、そっと目を瞑った。
影が重なる。
蓮とあたしの距離が無くなる。
次に目を開けた瞬間、周りから大きな歓声が上がった。
そして、こっちを赤い顔でチラリと見たタカが声を張り上げる。
「これにて、獅龍五代目総長、志摩蓮斗“姫”任命式を終了する!!」