『 』
3月
「ふーかあっ! 卒業しても、あたしのこと忘れちゃだめだからねっ」
「何言ってんの? 忘れるわけないじゃん、ばかだなー。」
春と言えば、別れの季節。 あたしは今日、中学を卒業するのだ。
「…でさ、ふーか。あんた、告白しないわけ?いくら同じ高校でも…あいつモテるよ、多分。」
あたしには、大好きな人がいた。彼はあたしの…所謂喧嘩友達、というやつだ。
彼はモテる。性格は取り敢えずとして、顔は良いのだ。
だけど…いっつも悪魔とか変態とか抜かしてるから、素直になるタイミングが分からずに今まで引きずった。
今更素直に、実は好きだったなんて…、きっと引かれちゃう、よなあ。
「うん…、あたしは、」
「風夏。」
秋に、無理だよと言おうとしたら、男の低い声が遮った。
「あ、と…何?ボタン全部無くして…モテる男は辛いよねえ。みんな見る目ないんだから。」
あ、ほら、ばか。またそんな可愛くもない。
声を掛けて来たのは、片思い中の喧嘩友達…落合凛だ。彼の前ではいつもこんな皮肉をこぼしてしまう。
「…うっせーな。お前なんか告白もされなかったんだろ、卒業式なのに。」
う。図星。
「…凛、は、告白されたわけ?」
第二ボタン、誰にあげたの?
誰に告白されて、なんて返事したの?
「…されたよ。でも、好きな奴がいるって断ったし。」
え、それ…って、
「俺……、秋が好きなんだ。」
あたしの恋は終わった。