内緒で入れたキモチ


「なーちゃん!!チカ!!」



もう帰ろうかとしていた頃、突然月仁が声をあげた。


「あのね。僕、もうすぐ引っ越す。」



赤く染まった空の下、月仁が言った。



「「引っ越す?」」



「うん、お父さんのね、お仕事が上手くいって。だから引っ越さなくちゃいけないんだって…」



俯いたまま顔を上げようとしない月仁に2人が声をかける。


「それってもうつーくんと遊べないってこと?」



「うん。引っ越すのは遠いところだって言ってたから…」

「やだよ、おれ!!もっとツキとナナと遊びたいよ…」


小さい頃の私たちにはつーくんの言う『引っ越す』はよくわからなかった。


ただ一緒にあそべなくなるのがつらくて。


その夜ずっと泣いた。大声だったのに誰にも注意されなかったのは家族はこのことを知っていたかもしれない。


そして、気づいてしまったこのキモチをどうするか


私は悩んだ。


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