静流の恋
僕と彼女
くだらない学校が終わると、いつものとおりぼくは即座に教室を飛び出す。
そのまま家まで一直線。
わき目も振らずに走る、走る、走る。
いくらぼくが若さみなぎる十七歳だといっても、この約十五分の全力疾走はこたえる。
特に、夏休み前のこの季節は。
おかげで今日も、我が家の玄関が見える頃には全身汗だくだ。
でもそんなことぜんぜん気にならない。
一秒でも早く。
もっと早く。
走りながら家の鍵を取り出すと、ぶつかりそうな勢いでドアに飛びつく。
鍵を開けながら、深呼吸をひとつ。
もどかしさに震える手と、不当な酷使で跳ね上がる心臓を落ち着かせる。
よし。
「ただいまっ・・・」
言い終わらないうちに、

どばん!  

二階にあるぼくの部屋の扉が派手な音を立てて開いたかと思うと、
だだだだだっ!
そこから飛び出た小柄な人影が階段を駆け下り、ぼくの胸へとまっしぐら。
「おっかえり~っ!」
ぼくは飛びついて来たからだを受け止める。
彼女のからだの重みがぼくにはうれしい。
だからいつもと同じのように、ぼくは彼女に笑いかける。
「ただいま、静流」
静流の、片方しかない目がきらきらと輝いて、ぼくを映していた。

愛しい、ぼくの静流。
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