静流の恋
「着替えは・・・着替えはどこにあるの?」
「いったいなにをそんなに急いでるのよ」
「とにかく急いでっ!」
そう怒鳴って振り返ったぼくは、こちらをじっと見つめる視線に気がついた。
「・・・かあさん?」
「・・・帰ったって、無駄よ」
「無駄? ・・・なにが?」
「もう、そんなに急ぐ理由なんてなくなったんだから」

どくん、と、心臓が、びっくりするほど大きな音を立てて胸の中で跳ねた。

「あの子は、お父さんが追い出したんだから」
「追い出した?」
かあさん、何の話をしているんだ。
あの子?
追い出した?
だれを。

・・・静流を?

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