静流の恋
静流が死んで、今日で丸二週間になる。

ぼくと静流が2ケツしていた自転車が、信号を無視したトラックにはねられたのだ。
ぼくはと言えば奇跡的にほぼ無傷。
でも、静流は・・・。
「はー久しぶりにみんなに会いたいな・・・って、こんなからだじゃムリか」
そう言ってぼくに微笑む静流の顔の左半分は、垂らした髪で隠されている。
ぼくは手を伸ばし、その髪をかき上げる。
「あ、やだ、見ないでよ・・・」
恥ずかしそうにする静流にぼくはちょっと胸が痛み、つい「ごめん」と謝ってしまう。
「あ~またあやまる。そーいうの無しにしよっていったじゃん」
「うん、だけど、やっぱなんか、不公平だなって。・・・静流だけ死んじゃうなんて」
「ふたりとも一緒に死んじゃうより良かったじゃん」
「いや、こんなことなら、いっそぼくも一緒に・・・」
「ストーップ! それ以上言ったら、ホントに怒るよ」
「でも・・・自転車こいでたのだって、ぼくの方なのに」
「いいのいいの、そーゆーのは運なんだから仕方ないよ。それにさ」
静流の頭がぼくの肩に乗る。
「こうやって、なんだかしんないけど死んでからも一緒にいられるんだから」
「ん・・・」
ぼくも首を傾け、静流の髪に鼻をうずめる。
甘い、ぼくの大好きな、静流の香り。その奥にかすかに漂う、刺激臭。
「は~でもなんでこんなからだになっちゃったんだろ。・・・神サマもさぁ」
「ん?」
「どうせなら、からだもトラックにつぶされる前に戻してくれたら完璧だったのに。なんでこう中途半端な奇跡起こすかなあ。おかげでみんなに会いにいけないじゃない。職務怠慢よね」
どこまで本気なのか、そう言ってぷんすか怒る静流に苦笑していると、リビングの時計のアラームが鳴った。
< 3 / 19 >

この作品をシェア

pagetop