静流の恋
「あ、いけない。もう七時だ。そろそろお母さんたち帰ってきちゃう」
「じゃ、ぼくの部屋に上がろうか」
「うん」
ぼくの部屋の押入れが静流の隠れ家だ。
(彼女はドラえもんみて~と笑ってた)
ぼくの両親は共働きなので、日中の静流は比較的自由に過ごせてる。
といっても、もちろん家の外には出られない。
静流はそんなそぶり見せないけど、十七歳の女の子にとって、それはやっぱりつらいことだろう。
それどころか、もう二度と、肉親や友達にも会うことはできないのだ。
ある真夜中、ぼくは静流のすすり泣く声で目を覚ました。
「どうしてあたし、こんなからだになっちゃったんだろ。ねえ、これからあたし、どうなっちゃうの?」
ぼくはなにを言ってあげたら良いのかわからなくて、ただそっと、震える彼女を抱きしめることしかできなかった。
情けない。
ほんとうに、
情けない。
次の朝目を覚ますと、静流はもういつものあかるい静流に戻っていた。
だけど。
ほんとはぼくも静流も気づいてる。
静流のからだは、どんどん腐ってきていた。
顔のアザは日に日に広がってるし、少しずつ臭いもきつくなってきた。
これからぼくたちは・・・
静流は、どうなるんだろう。
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