静流の恋
「ど、どうしたの、これ」
一瞬今日は静流の誕生日? なんて考えてヒヤッとする。
ぼくなんの準備もしてないよ。
いや、落ち着け。
静流の誕生日は冬だ。
あれ、じゃあぼくの?
ちがうよ。
「どーよ、すごいでしょう?」
そう言ってエッヘンと胸を張る静流に、ぼくはおそるおそる尋ねる。
「えっと・・・忘れてたら本当にごめんなさい。今日、何の記念日だっけ?」
ぼくの言葉に静流はきょとん顔。
あ、可愛い。
「別になんの記念でもないけど」
「あ、そっか。・・・うん、そうだよね」
「そうよ」
「・・・えっと、じゃあ、これはなに?」
「・・・気に入らない?」
静流の表情が曇る。
「いやいやいや、そうじゃないよっ。ただ、びっくりして。だってなにもないのに、すごいじゃない、この飾りつけ」
「すごいでしょー丸一日かかっちゃった」
うれしそうに笑う。
「うん、すごい」
ぼくがそういうと静流はこらえきれなくなったようにぼくの胸に飛び込んできた。
「ね、これからは毎日パーティーしよう!」
「パーティー?」
「そっ」
「毎日?」
「そそそそっ。さすがにこの規模は無理だけど、もっと簡単なやつでいいから、明日からも、毎日」
「いいけど、なんのパーティー?」
「いいじゃん! 楽しくパーティーするのに理由なんて不要よっ! じゃ、決定ね。そうと決まったらこれ、かたずけるから手伝って」
「うん・・・ええっ! かたずけんの?」
「当たり前じゃない。ぼやぼやしてたらお母さんたち帰ってきちゃうよ」
「でもまだパーティーらしいこと何もしてませんけど・・・」
「こーゆーのはやろうとすること自体が大切なのよ。ほらほら急いで。ケーキは部屋に運んでねーあとで一緒に食べよ。ああっ! 大変もうこんな時間!」
静流に急き立てられ、ぼくはなんだかよく分からないまま、大慌てて部屋をかたずけた。
何でこんなことをしたのかは結局謎のままだったけど、静流はとにかく楽しそうで、ぼくは何も分からないまま、でもなんだかうれしかった。

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